50代女性の薄毛は、加齢、閉経によるホルモンバランスの変化などいくつかの原因があります。
ここでは、50代女性特有の薄毛の原因とその対策をご説明します。
原因に応じた対策をして、薄毛を改善していきましょう。
目次
更年期で抜け毛が増える
更年期になると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌される量が大きく変化しながら、低下していきます。
エストロゲンの変化により、ほてりやのぼせ、発汗、めまい、動悸(普通では自覚されない心臓の拍動やその乱れを自覚すること)など様々な症状が現れます。
更年期とは?
医学的には、月経が来ない状態が1年以上続いたとき、1年前に閉経したとされ、閉経の前後5年間、合わせて10年間を更年期といいます。
早い方では40代前半、遅い方では50代後半に閉経しますので、50代女性の多くは更年期と考えられます。
更年期で薄毛に
程度の差はあれ、どなたにも訪れる更年期の症状ですが、薄毛も更年期の特徴のひとつです。
更年期でエストロゲンの分泌が大きく変化するため、ヘアサイクル(毛周期)が乱れ薄毛になってしまうからです。
エストロゲンの分泌が減るのは、更年期だけではありません。
出産するとエストロゲンを含む女性ホルモンが一気に少なくなり、ヘアサイクルが乱れ薄毛になる女性の方もいらっしゃいます。
出産して薄毛になった経験を持つ女性の方は、更年期でも薄毛に要注意です。
正常なヘアサイクルとは?
髪は、生えては伸びて、伸びては抜け、抜けては生えるというサイクル(ヘアサイクル・毛周期)を繰り返しています。
髪が伸びる期間である「成長期」は正常であれば4〜6年。
髪が成長しきって抜ける準備をする「退行期」は正常であれば2週間程度。
新しい髪を作る準備をする「休止期」は3〜4か月といわれています。
ヘアサイクルの乱れで薄毛になる
正常であれば髪の毛の8〜9割が成長期で、1%が退行期、1〜2割が休止期とされていますが、更年期などでヘアサイクルが乱れると、以下の原因で薄毛になってしまいます。
- 成長期が短くなって抜け毛が増える
- 成長期の髪の割合が減少し、休止期の髪の割合が増える(なかなか生えてこない)
ヘアサイクルの乱れでハリやコシが無くなる
「以前はもっと髪の毛にハリやコシがあったのに、最近細くなってきた」というお悩みもヘアサイクルが原因です。
太く成長してくれるはずの髪が、成長期の途中で成長するのを辞めてしまい退行期に入って抜けてしまうからです。
また、女性ホルモン・エストロゲンは髪にハリやコシを与える効果があるとされており、エストロゲンが減少するだけでもハリやコシが無くなります。
更年期はヘアサイクルの乱れと女性ホルモンの低下のダブルパンチで髪のハリやコシにダメージを与えているのです。
更年期による薄毛の治療
更年期でヘアサイクルが乱れたことによる薄毛の治療は、お薬でホルモンのバランスを整える方法と、女性の発毛や育毛効果があるとされるミノキシジルというお薬による治療、頭皮にお薬を注射するメソセラピー、低出力レーザーなどがあります。
ホルモンバランスを整える治療
更年期の症状が重い方が治療される際は、女性ホルモン剤というお薬が使用されます。
女性ホルモン剤と聞くとピルを思い浮かべる方も多いですが、低用量ピルや超低用量ピルよりも少ない量の女性ホルモンで治療を行います。
ちなみに、低用量ピルは50歳以降、使用できません。
薄毛の場合は女性ホルモン剤ではなく、男性ホルモンを抑えるスピロノラクトンというお薬が使われることが多いです。
50代で薄毛に悩んでいる女性は、女性ホルモンの割合が低下しており男性ホルモンの割合が多くなっているために、男性ホルモンの割合を抑えて女性ホルモンを多くするという治療方法です。
ただし、スピロノラクトンというお薬は発毛や育毛に直接的な効果はありません。
ホルモンのバランスを整えて、正常はヘアサイクルに近づける目的で使用されることが多いです。
発毛効果があるミノキシジル
ミノキシジルは脱毛症の治療薬で、内服(飲み薬)と外服(つけ薬)があります。
50代女性だけではなく、ほとんどの脱毛症に効果を発揮し薄毛といえばミノキシジルというように幅広く用いられています。
なお、発毛剤にはミノキシジルが含まれています。
有効成分を直接頭皮に入れるメソセラピー
メソセラピーとは、有効成分を注射器で直接注入する治療方法です。
使用する成分は、ミノキシジルの他、成長因子や亜鉛などの栄養素で、クリニックによって成分が異なります。
気になる部分に重点的に注入できるので、生え際やつむじなど気になる部分だけを治療することも可能です。
低出力レーザー
低出力のレーザーを使って、頭皮の血行を促進と毛母細胞(髪の毛を作り出す細胞)活性化を行う治療方法です。
加齢による薄毛
年齢を重ねていくと、お肌などの新陳代謝に必要な時間が長くなっていきます。
10代のお肌なら28日周期で生まれ変わりますが、50代になると45日周期と長くなるのです。
髪の毛が生える頭皮もお肌ですから、加齢による影響を無視できません。
さらに、紫外線やパーマ、カラーによるダメージの回復にも時間がかかってきます。
血の巡り「血行」が悪くなって薄毛に
50代となると若い時よりも血行不良が目立ってきます。
血行不良になると、髪の毛を作る毛根に栄養が届きにくくなるので、材料不足で薄毛になってしまうのです。
血行不良が原因とされる体の不調には、次のものがあります。
- 肩こりや腰痛など
- 冷え性
- むくみ
- 緊張性頭痛
- 眼精疲労
- 薄毛や抜け毛
若い時には少なかった不調ですよね。
「最近、肩こりが酷くなった」と感じたら、薄毛予備軍かもしれません。
血行不良の原因はストレス・運動不足・食生活の乱れ
薄毛改善のため血行不良の原因についてもみていきましょう。
血行不良の最大原因とされるのがストレスです。
ご存じの方も多いですが、ストレスを感じると交感神経が優位になり血の巡りが悪くなってしまいます。
50代女性は家庭や職場だけではなく更年期など様々なストレスにさらされていることが多いので、できるだけストレス解消をして薄毛を防ぎましょう。
ストレス解消のために食に走ってしまうと、さらに血行不良を招きかねません。
外食ばかりで栄養のバランスが崩れたり、断食やダイエットで栄養不足になったりすると、髪の毛が成長するための栄養が不足してしまいます。
また、運動不足も薄毛の原因です。
50代になり体力が衰えてきたからといって、階段を使わないでエスカレーターやエレベーターを使うなど、普段から運動することを避けていないでしょうか。
50代女性の薄毛に効くストレス解消法
薄毛に悩む50代女性のおすすめのストレス解消法はマッサージです。
特に頭皮マッサージはおすすめで、頭皮の血行をよくしてくれます。
美容室などに行って頭皮マッサージをお願いしてもいいのですが、ご自身でも簡単に頭皮マッサージはできます。
頭皮マッサージのコツは頭皮をこすらないことです。
頭皮をこすってしまうと頭皮や髪の毛を生やしてくれる細胞にダメージを与えてしまいます。
手を広げて、指圧をするように押しながら、頭皮が柔らかくなるようにマッサージしましょう。毎日のシャンプーのついでに行ってもいいですし、毎朝ヘアセットをする前にするとよいでしょう。
また、頭皮をマッサージしてくれるヘッドマッサージャー(頭皮マッサージ器)を使ってのマッサージもおすすめです。
さらに、肩や首がこっていると、頭への血行が悪くなっていますので、肩や首のマッサージやストレッチも忘れずに行うと効果的です。
50代女性は栄養不足に要注意!
50代になると、運動不足や加齢とともに筋肉量が少なくなり必要なカロリーが低下したり、ダイエットや断食で必要なカロリーが減ったりすると、食欲が落ちていきます。
またカフェなどに行く機会が多く、ケーキなどの甘いスイーツを食べてしまうと、甘いものでお腹が一杯になってしまいバランスの良い食生活がしにくくなります。
お野菜やお肉、お魚から取らなければならない鉄分や亜鉛などのミネラル、身体の代謝に必要なビタミンB群をはじめとするビタミン、身体や髪の材料になるタンパク質が不足しているかもしれません。
ヘアスタイルによる薄毛
「若い時からずっとポニーテール」「お団子にすることが多い」「編み込みをする」など髪の毛を引っ張って整えるヘアスタイルの場合、牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)という脱毛症になることがあります。
また、同じ分け目を続けても髪の重さで牽引性脱毛症になることがあります。
牽引性脱毛症の特徴
抜け毛を観察してみましょう。
抜け毛の頭皮に埋まっている方の先端、毛球部分に白~乳白色のものがついている場合と、ヒゲ根と呼ばれる毛球にヒゲのようなものが付着している場合、牽引性脱毛症の可能性があります。
牽引性脱毛症による薄毛の原因と対策
髪の毛を引っ張ることが原因ですので、同じヘアスタイルをしない、同じ分け目を続けない、髪を引っ張らないでもよいヘアスタイルにすることが改善手段になります。
なお、牽引性脱毛症による薄毛は1日や2日といった短い期間ではなく、数年といった長い期間で薄毛になります。
また、早く薄毛を改善したいのでしたら、育毛剤や発毛剤を使う手段もあります。
病気で薄毛になることも
50代女性は、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの病気で薄毛になることもありますので、いつもと身体の感覚が違うと感じた場合は早めに婦人科や内科などに行くようにしましょう。
薄毛は遺伝する?薄毛になりやすい人
男性の薄毛は女性と原因が違うことが多いです。
薄毛に悩む多くの男性は、AGA(男性型脱毛)という病態で、テストステロンという男性ホルモンが原因で発症します。
テストステロンが5αリダクターゼという酵素と反応してDHT(ジヒドロテストステロン)に変化します。
DHTが毛乳頭細胞(髪の毛を成長させる毛母細胞に対して栄養や指令を送る細胞)にある男性ホルモン受容体(レセプター)と結合し、脱毛を促します。
5αリダクターゼ分泌量は個人差があり、遺伝的要素が関わっているという説が有力で、男性の薄毛は遺伝するといわれています。
また、毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体の数が少なければ薄毛になりにくく、多ければ薄毛になりやすくなりますが、男性ホルモン受容体の数も遺伝するから薄毛も遺伝すると考えられています。
しかしながら、同じ遺伝子を持った男性でもAGAになるとは限らないという研究もあり、男性であっても遺伝と環境、生活習慣の影響があるとされています。
一方、AGA(男性型脱毛)の女性版ともいえるFAGA(女性男性型脱毛症)による薄毛は、ホルモンバランスが崩れることが原因ですが、ホルモンバランスを整えると改善するため、遺伝的な影響は少ないとされています。
しかし、女性であっても同じ食生活、同じ生活習慣、環境で過ごしていると、親と同じように薄毛になるといわれています。
体重や喫煙の有無などでも薄毛や脱毛の有無や進行度に差が出てくることもわかっていますので、両親や祖父母が薄毛や脱毛しているようでしたら、健康的な生活を送れるように切り替えていくとよいでしょう。
育毛剤や発毛剤を選ぶときの注意点
一本一本の髪の毛が細くなってしまうと、全体の髪の量は減っていないのに薄毛に見えてしまいますから、しっかりと成長させたいですよね。
薄毛を予防したい、薄毛を改善したいときに思い浮かべるのが育毛剤と発毛剤です。
育毛剤と発毛剤は、機能に差がありますので、ご注意ください。
抜け毛を防ぐ育毛剤
頭皮を清潔に保ち髪が育ちやすい環境を整え、「抜け毛を防ぐ」役割が育毛剤です。
育毛剤には、髪の毛を増やす成分は含まれていませんので、ご注意ください。
新たな毛を増やす発毛剤
新しい髪を発毛させ、成長させ、抜け毛を防ぐのが発毛剤です。
発毛剤には、男性用と女性用があり成分に差がありますので、女性の方は女性用を選んでください。
発毛剤にはミノキシジルという発毛を促す成分が含まれており、発毛が期待できますが、使用には注意する必要があります。
各メーカーが発毛剤を使用できるかのチェックシートなどを作っていますので、必ずチェックをしてから使うようにしましょう。
もし、該当しない場合は、発毛が期待できませんし、副作用が出てしまうこともありますのでご注意ください。
育毛剤と発毛剤は併用しない
「育毛剤と発毛剤とあるのだから、両方使えば薄毛に効果が高いのでは?」と考えて併用するのはリスクがあるのでおすすめしません。
- 成分のバランスが崩れてしまい、頭皮にうまく浸透せず効果が落ちてしまう可能性が高い。
- 成分が混ざり合って、副作用が発生する確率が高くなる。
2種類の育毛剤を使う、2種類の発毛剤を使うのも同様の理由でNGです。
育毛剤と発毛剤はどちらか片方だけ、1種類だけ使うようにしましょう。
薄毛治療を受けても育毛剤を使っても頭皮マッサージをしても、材料が無ければ髪は生えないときのチェックポイント
頑張って薄毛を改善しようとしているのに、思ったような効果が得られないときは次をチェックしてみましょう。
- 50代女性の多くは「食べ過ぎている」「栄養過多」と考えている方が多いのですが、バランスの悪い食生活になっていることが多いといわれていますので、この機会にご自身の食生活を見直してみましょう。
- シャンプーやトリートメントはご自身にあっているでしょうか。またしっかりとシャンプーを洗い流しているでしょうか。今一度確認してみましょう。
- 発毛剤を使い始めてから効果が出るまで6か月は必要といわれています。焦っていないでしょうか。
薄毛が気になるようでしたら、ウィッグを使って薄毛を隠す方法や自分の髪の毛に人工毛を結びつける増毛、ヘアスタイルを変えて薄毛を目立たなくする方法なども考えないといけないかもしれません。
女性の薄毛を隠す方法については、こちらの記事をご覧ください。
50代女性の薄毛についてのよくある質問
Q.50代女性に多い薄毛の原因は何ですか?
A.50代女性に多い薄毛の原因には、ホルモンバランスの乱れ、加齢による頭皮環境の悪化、栄養不足、ストレス、遺伝、生活習慣の乱れなどが考えられます。
特に閉経に伴うエストロゲンの減少が髪の成長サイクルに影響を及ぼすことが多いです。
Q.ホルモンバランスの乱れによる薄毛にはどのような対策がありますか?
A.ホルモンバランスの乱れが原因の場合、女性ホルモンを整えることが重要です。大豆イソフラボンやビタミンEを含む食品を積極的に摂取し、適度な運動やストレスケアを心がけると良いでしょう。また、必要に応じて婦人科でホルモン療法を相談するのも効果的です。
Q.頭皮環境の悪化を改善する方法はありますか?
A.頭皮環境の改善には、頭皮を清潔に保ち、適切な保湿を心がけることが重要です。
シャンプー選びでは、刺激の少ないものや保湿成分を含むものを選びましょう。また、週に数回の頭皮マッサージで血行を促進すると、健康な髪の育成に繋がります。
Q.栄養不足による薄毛の予防にはどんな食事が良いですか?
A. 栄養不足が薄毛の原因となる場合、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取することが大切です。特に、亜鉛、鉄分、ビオチン、ビタミンB群は髪の健康に欠かせない栄養素です。肉、魚、卵、豆類、緑黄色野菜、ナッツ類などをバランスよく食べるよう心がけましょう。
Q.ストレスによる薄毛を防ぐにはどうすればいいですか?
A.ストレスによる薄毛を防ぐには、まずストレスを溜め込まない生活習慣を作ることが重要です。適度な運動や趣味を楽しむ時間を設ける、リラックスするためのマッサージや入浴など、ストレスケアの方法を日常に取り入れましょう。
Q.50代の女性が避けるべきヘアケアの習慣はありますか?
A.避けるべき習慣として、過度なヘアカラーやパーマ、頻繁なシャンプー、ドライヤーやヘアアイロンの過剰な使用などが挙げられます。
これらは頭皮や髪の負担になり、薄毛を悪化させる可能性があります。必要以上のヘアケアは控え、頭皮に優しいケアを心がけましょう。
Q.遺伝による薄毛は改善できますか?
A.遺伝による薄毛を完全に防ぐことは難しいですが、適切なケアを行うことで進行を遅らせることは可能です。
頭皮マッサージや育毛剤の使用、栄養バランスの整った食生活など、頭皮環境を整える努力が効果的です。また、専門医による治療を検討するのも一つの方法です。
Q.50代女性におすすめの育毛剤はありますか?
A.50代女性には、女性ホルモンのバランスを整える成分や頭皮を保湿する成分を含む育毛剤がおすすめです。
ミノキシジルやキャピキシルを含む育毛剤は、頭皮の血行を促進し、毛髪の成長をサポートします。購入前に成分や使用方法を確認し、自分の頭皮に合うものを選びましょう。
Q.生活習慣の改善が薄毛対策に効果的ですか?
A.はい、生活習慣の改善は薄毛対策に非常に効果的です。規則正しい睡眠、バランスの良い食事、適度な運動は、頭皮環境を整え、髪の健康を維持するために欠かせません。
特に、睡眠は髪の成長ホルモンの分泌に関わるため、質の良い睡眠を心がけましょう。
Q.薄毛が進行してしまった場合、どのような治療法がありますか?
A: 薄毛が進行してしまった場合、専門医の診察を受けることが重要です。
治療法としては、育毛剤の使用、頭皮のメソセラピー、レーザー治療、植毛などがあります。症状や原因に合わせた治療法を選択するためにも、まずは専門家に相談しましょう。